老人ホームのような施設介護の現場では、高齢の利用者の日常生活をトータルにサポートすることが主な仕事になります。もちろんその中にはレクリエーション活動も、重要な仕事の1つとして含まれます。レクリエーション活動は高齢の利用者の生活を明るく豊かにし、QOLの向上には欠かせないからです。
ここでは老人ホーム等でよく目にする手遊びも含め、レクリエーション活動を効果的に実現する様々なポイントについて紹介します。
そもそも介護におけるレクリエーションとは?
レクリエーションという言葉を聞いて、みんなで楽しい遊びをしているような、漠然としたイメージを持つ人もいるはずです。確かにそれでも全く間違いではありませんが、もう少し広くレクリエーションの意味を捉えると、日常生活を明るく愉快にする一切の行為と言えます。
しかもこの行為とは、単純に身体を動かすことだけを意味しません。視覚や聴覚の他、味覚や嗅覚さらに触覚といった、五感をフルに活用した全ての行為を指します。さらに介護におけるレクリエーションになると、高齢者や障害者が生活の主体者として、人生に楽しみや喜びを見出すための行為や活動を意味することになります。
リハビリテーションとの違いは?
介護現場でのリハビリテーションも、高齢者や障害者の機能あるいは能力に積極的に働きかけて、その主体的な生活を取り戻そうとする点では、介護のレクリエーションと似ているかもしれません。しかし両者が決定的に異なるのは、リハビリテーションが既に失われた機能や能力の回復を目指すのに対し、レクリエーションでは残存している機能や能力に着目し、それを有効活用することで、高齢者や障害者の主体的な生活の実現を図ろうとする点です。
つまり短所ではなく長所に注目して、それをより一層高めようとするのが、介護レクリエーションの大きな特徴と言えます。このような考えになるのは、いくら高齢者や障害者のマイナス要因を解消しても、そこから明るく楽しいQOLの領域へはなかなか到達しにくいという、リハビリテーションの現実があるためです。
介護レクリエーションの効果とは?
老人ホームのような施設介護の現場にレクリエーションを取り入れることによって、高齢の利用者のポジティブな行動変容の効果が期待できます。例えば普段は表情の変化に乏しい人が、徐々に笑顔を見せるようになった、あるいは寡黙な人が言葉を口にするようになった、さらには車椅子から突然立ち上がってお手玉を始めた等、今まで無理だと思っていたことが、いつの間にかできるようになっていたという、幾つもの事例が報告されています。
このような介護レクリエーションの効果を実現するには、日頃から現場で利用者のアセスメントに基づいた援助仮説を十分に検討し、介護レクリエーションで期待できる行動変容を予測しながら、理想的な個別援助メニューを提供できる体制が必要になります。
介護レクリエーションをサポートするスタッフの役割とは?
先述したように介護におけるレクリエーションとは、高齢者や障害者が生活の主体者として、人生に楽しみや喜びを見出すための行為や活動を指します。老人ホームといった施設介護の現場にレクリエーションを取り入れるのであれば、高齢の利用者の生きる意欲を引き出し、QOL向上につながるように、現場のスタッフには楽しく演出することが求められます。
たとえちょっとした手遊びであっても、個別援助重視の観点を忘れずに、様々な福祉レクリエーション財や文化財をアレンジして、利用者本人が興味や関心を持てるように工夫しなければなりません。さらに介護現場でのレクリエーションに役立つような介護予防や健康等の情報については、書籍をはじめテレビやラジオあるいはインターネットなどから、普段こまめに集めて理解しておくことも、スタッフの姿勢として求められます。
日常生活の身の回りに存在する、あらゆる福祉レクリエーション財や文化財をできる限り活用し、利用者のQOL向上につながる介護レクリエーションの支援活動を実践することが大切です。
最初の雰囲気づくりには手遊びが効果的!
レクリエーションが日常生活を明るく愉快にする一切の行為である以上、実際の現場では楽しい雰囲気を演出しなければなりません。これは老人ホームのような施設介護の現場でも同様です。介護レクリエーション活動を支援するスタッフには、現場での演出の仕方はもちろん、個々の利用者の価値観や楽しみ方、あるいは楽しさの本質そのものを、普段から探求し続ける姿勢が求められます。
また現場では楽しさの流れを意識したメニューを提供することも、忘れてはなりません。特に大切なのが最初の10分間。この時間帯で楽しい雰囲気をつくることに成功すれば、その後は各メニューの特性や効果あるいはメリットなどを活かしながら、楽しい雰囲気の中でレクリエーションの進行が可能になります。
例えば後出しジャンケンのような簡単な手遊びならば、高齢の利用者でも直感的に理解しやすいので、最初の雰囲気づくりに効果的に役立つでしょう。
レクリエーションの楽しい雰囲気を保つポイント
最初の雰囲気づくりに成功したら、そのまま楽しい流れを保ち続けることが大切です。そのためには一つひとつのメニューの進行ペースや、切り替えるタイミング等を、あらかじめよく計算しておく必要があります。例えばメニューは15分区切りにしながら切り替え、メリハリのよい進行を心がけます。
同時に、レクリエーションの活動支援スタッフについても、立ち位置をはじめ声の出し方や表情あるいはジェスチャーなどを、十分に考えておくことが求められます。また老人ホームのような施設介護の現場では、大勢の集団でレクリエーションを実施するケースも珍しくありません。
このような集団レクリエーションであっても、可能な限り個別援助に近いサポートを心がけた上で、楽しい雰囲気の流れを保つことが重要です。高齢の利用者一人ひとりが楽しめるように、年齢や性別あるいは健康状態や価値観、さらに会場の環境等を総合的に勘案し、様々な工夫をこらしながら準備を進めていきます。
例えば手遊びをメニューに採用するなら、お手玉のように高齢者の多くが知っている伝承遊びを取り入れることで、集団レクリエーションでの個別援助にも、幅広く応用することができるでしょう。
集団で介護レクリエーションを実施する場合も、個別援助やQOL向上の視点は忘れずに!
老人ホームのような施設介護の現場で集団レクリエーションを実施すると、たとえ簡単な手遊びであっても、高齢の利用者一人ひとりの把握やメニューの進行の仕方、あるいは安全性の確保など、個別援助の視点から難しいケースがあるのも事実です。
それでも理想的な介護レクリエーションを実現するためには、利用者の生活を明るく豊かにし、QOLの向上を目指す姿勢を忘れてはならないでしょう。
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